エッセンシャルオイル(精油・アロマオイル)の基礎知識

〜 中級編 〜
1. エッセンシャルオイル(精油)の品質を決める要素

エッセンシャルオイル(精油)

エッセンシャルオイル(精油)の品質の良し悪しはとてもたくさんの要因に影響されて決まります。これは、ワインと似たようなところがあります。ワインは、同じブドウという原料を使って世界中で生産されていますが、産地や生産者によって、とても品質の良いものからそうでないものまで、大きな差があります。同様に、同じ種類のエッセンシャルオイル(精油)でも、数多くの条件によって、香りや品質の良し悪しに大きな違いが生じてきます。

1. 原料植物の生育条件

エッセンシャルオイル(精油)の香りと品質は、まず第一に原料となる植物の生育条件に大きく左右されます。これは、天然植物の生体内に生産されるエッセンシャルオイル(精油)の成分が、温度や湿度、日照時間などの条件によって異なってくるためです。


特定のエッセンシャルオイル(精油)は、その生産に適した地域と、そうでない地域があります。たとえば、ペパーミントは高温多湿の地域で育つものからより上質の精油が得られるため、世界中にある生産地の中でも特にイングランド産のものが優れているとされます。同じように、バラの生産に非常に適した気候のブルガリアは、最上質のローズ・オットーが生産されることで有名です。ラベンダーは、標高の高い地域で生育したものから生産されたものほど、良い香りの精油が得られます。これは、標高の高いところに行くほど、植物の敵である害虫が少なくなることと関係があります。ラベンダーは、害虫を遠ざけるために、体内に昆虫忌避作用のあるカンファーと呼ばれる成分を生成しますが、害虫の少ないところではその必要性が低くなり、カンファーの生成量が少なくなります。カンファー分が少なくなったラベンダーは、よりリラックス効果の高い上質の香りになります。当店で販売しているラベンダー・ハイアルトは、フランスの高原で育ったラベンダーを原料としているため、通常のラベンダーよりも上質の香りがします。


こうした地域性以外にも、その原料植物が育った年の気候条件によっても、植物の体内に生成される成分に微妙な変化が生じるため、エッセンシャルオイル(精油)の香りもやはり変動します。これも、ワインに似ているといえます。

2. 原料植物の収穫方法

エッセンシャルオイル(精油)の品質に影響を与える人的要素として、最初の重要なポイントは、原料植物の収穫方法です。特に花を含む部分から得る精油にとって、これは極めて重要になります。たとえば、ラベンダーは開花しているときに収穫しますが、ペパーミントの場合は完全に開花する前に採取したものを使わなければなりません。完全に開花してしまったペパーミントを蒸留した場合、有毒なケトン類が精油中に増えてしまうからです。また、一日のうちいつ収穫するかも大事な点です。カモミール・ジャーマンは、朝収穫したものを使う必要があります。午後に収穫したものから得られる精油は、有効成分のアズレンが少なくなってしまうので、アロマテラピー上の効果が著しく劣ってしまいます。ジャスミンは、日没後に内部で化学的な変化が起こって香りが強くなるため、夜の間にたくさんの人手を使って一斉に花を摘み取ります。日中に摘み取ったものからは香りの良いジャスミン油は全く得られません。こうした基本的なこと以外にも、経験を積んだ優秀な生産者は、原料植物につく朝露の量や、日々の気候の推移などを観察して、最上質のエッセンシャルオイル(精油)を得られるタイミングを的確に見定めて収穫を行います。高品質の精油を得るには、原料植物生産者の知識と経験が不可欠です。

3.精油を生産する場所

アロマテラピーの使用に適した品質グレードのエッセンシャルオイル(精油)を生産するためには、収穫地のすぐそばで精油を生産する必要があります。収穫した原料植物をトラック輸送した場合、輸送中に排気ガスなどの汚染物質に晒されるリスクが高まり、精油の品質に影響してしまうためです。工業用原料向けにコストを重視して作られる精油の場合、生産効率を上げる目的で、1箇所の蒸留場に広範囲から原料をトラック輸送している場合がありますが、こうしたものは工業原料としてはともかく、アロマテラピーでの使用には避けるべきと言えます。

4. 水蒸気蒸留の技術

水蒸気蒸留の際の加熱、加圧の度合いは、高品質のエッセンシャルオイル(精油)を生産するためには極めてデリケートで重要な要素になります。高温、高圧で蒸留を行うと、より多くの精油を得ることができるため、コストを抑えることが可能ですが、精油のデリケートな芳香成分を壊してしまいます。高品質の精油を生産するには、生産する精油の種類に応じた最適な圧力と温度で蒸留しなければなりません。また、質の良い精油を得るには、蒸留時間をどのように設定するかも大切な要素になります。本来、原料から有効成分を損なうことなく取り出して、アロマテラピーでの使用に適したグレードの精油を得るには、かなりの時間をかけて蒸留を行う必要があります。最適な蒸留時間も抽出する精油の種類によって複雑に異なります。たとえばサイプレスは24時間、ラベンダーは2時間、タイムは90分の間、最適の圧力で蒸留し続けないと、有効な成分が充分抽出されず、上質の精油を得ることができません。蒸留業者は、生産コストを抑えたい場合、圧力と温度を上げて、代わりに蒸留時間を極端に短縮します。こうすることで、燃料代と人件費を大幅に抑えるとともに、蒸留釜への負担を減らして耐用年数を長くすることができるためです。このような方法で生産された精油は、有効成分が得られないだけでなく、熱と圧力により成分がダメージを受けて、品質が大幅に劣化します。100%純粋の精油であることに変わりはありませんが、こうしたものはあくまで工業用原料として使われるべきもので、アロマテラピーでは用いるべきではありません。


アロマテラピーについて少し勉強されて、水蒸気蒸留の単純な原理(詳しくは初級編~エッセンシャルオイル(精油)はどうやって作られるの?)を知った方の中には、エッセンシャルオイル(精油)は簡単な蒸留釜と原料植物さえあればすぐに作れてしまうと思われる方もおられると思います。実際、少し広めのお庭があれば、お家でも使えるぐらい小さなサイズの水蒸気蒸留装置もありますので、家庭で育てたハーブからでも少量の精油を作ることが可能です。ところが、アロマテラピーでの使用に本当に適したグレードの精油を得るには、上記のように複雑な条件を満たすことが必要になるため、相当な知識や経験、技術が必要になってきます。

5. 蒸留釜の材質

水蒸気蒸留の技術以外に、蒸留装置の材質もエッセンシャルオイル(精油)の質を左右します。蒸留装置には銅製、鉄製、アルミニウム製、ステンレス製など、いくつかの材質がありますが、生産する精油の種類によっては、蒸留中に特定の金属と反応して成分に変性を起こすことがあるため、適した材質のものを使用する必要があります。




このように、生産原理自体は単純であっても、非常に多くの要因がエッセンシャルオイル(精油)の品質に関わっています。エッセンシャルオイル(精油)の生産においては、いずれの段階でもコストを抑えるために、手を抜いたり、時間を短縮したりして、品質グレードを犠牲にすることが可能です。工業用原料としては問題がなくても、アロマテラピーの用途に使用した場合、治癒特性が損なわれるだけでなく、場合によっては望ましくない影響を受けてしまう場合もあるため、アロマテラピーにおいては、信頼できるエッセンシャルオイル(精油)を選んで使用することが大切になります。



ページの先頭へ戻る
COPYRIGHT © エッセンシャルオイル(精油・アロマオイル)のお店 Tea-treeの森 All rights reserved.